男との行為は、やっぱり痛かった。


わかったのは、俊ちゃんと違う、ってことだけ。


何がどう違うのかはよくわかんないけど。


どうやらあたしは、自分が思う以上に俊ちゃんの体に慣れてしまっているらしい。


イけなかったことがそれを証明してるのだとしたら、悲しい話だ。



「ごめん、帰る。」


『え?!』


「あたし、お兄ちゃんのご飯作らなきゃいけないんだよね。」


それだけ言い、適当に髪の毛を直して男の家を出た。


もうすぐ梅雨になろうとする、夕刻の風。


帰るまでは、泣きだして雨なんか降らせないで、と。


願いながら、家路を急ぐ。





―ガチャッ…

『亜里沙。』


「―――ッ!」


聞かなくても、怒っていることが滲み出ている、いつもよりも低い声。


怒らせようと思ってやったけど、いざ怒られるといい気はしない。



「…ご飯でしょ?
すぐに作るから。」


『…何でいつもより遅いんだ?』


「委員会、あったから。」


それだけ言い、荷物を投げて足早にキッチンに向かう。


“男”と言っても良かったのだろうけど、

竹内の時の二の舞にだけはなりたくなかったから。


一体あたしは、何がしたいのかわからない。


どうせコトがバレれば、ヤられることは一緒なのに。