あれからあたしは、毎日遅刻ギリギリのあの電車で通学してる。


だって…木村って人に逢えるかもしれないでしょ?


『まぁ、実際はそんなにうまくいかないんだけどね!』


溜め息混じりに口からこぼれた。


学校までの駅に着くたびにキョロキョロ…


諦めつつも期待なんかしちゃってるあたし。


『今日も駄目だぁ…』


つぶやきながら教室に入る。


『あっ!あおい♪おはよぉ~!』


あたしの席からちづるが元気に手を振る。


『おはよ。てかソコあたしの席だから!』


あたしは笑いながら言った。


『いいぢゃんよぅ。』


ほっぺたをプゥってふくらますちづるは可愛い。


『あは!スネないでよ。』


あたし達の朝は、いつも通りたわいもない会話で始まる。


『ねっ!あおいは志望校決めた?』


ちづるは進学希望の用紙を持ってあたしに聞く。


『全然!なんかどこでもいいっていうか…ちづるはもぉ決めた?』


あたしはスッカリ頭から消えてた用紙にちょっと焦る。


『ん~。お母さんが近くの高校にしたらって言うから、清流高校か滝川高校にしようかなぁって思ってる。けど内心わかんない。』


ちづるは困ったように言う。


ちづるは頭がイイ。あたしとは兎と亀ぐらいの違いで優秀だ。


だからどこの高校でも余裕だろうな。


『いいなぁ~ちづるは頭よくて。』


あたしは自分の席の後ろに座りながら言う。


『普通だよ!あおいが勉強しないだけ!』


ちづるは厳しい顔で言う。


『うぅ…あたし勉強嫌いだもん。』


机に顔を伏せながら言う。