【奏side】
「ちょ、王子!答え教えて!」
前の席の人にヒソヒソと話しかける坂下の声が耳に入った。
坂下自身は小声で話しているつもりなのだろうが、斜め後ろの俺には丸聞こえだ。
『王子』と呼ばれた人は相当嫌がっている様子。
その光景を見て思わず小さなため息をついてしまった自分がいる。
質問された問題は俺でも理解できたので、ノートの切れ端に答えを書いて坂下の机上を着地点と定めて慎重に狙って投げた。
紙切れは見事に坂下の机上に着地して、思わず笑みを溢した瞬間、坂下が素早く気付いた。
「ん?何これ…」
即紙を開くと、ぱぁっと笑顔になったような気がした。
先生に急かされて俺が投げた紙を見ながら答える坂下。
