それからしばらく経って、かぐや姫が月に帰る前夜のこと。



「かぐや、さっきから何故そんなに泣いているのだ?」


かぐや姫は毎日毎日泣き続けていました。

そのことを心配した翁は、かぐや姫に理由を問いかけました。


「......実は、私...月の都の姫なんです。そして今日がその月に帰る日。

私は、この生活が好きになってしまいました......。


私はもっと、ここにいたい。一生いたいのです」


かぐや姫はそういうと、更に泣きました。


かぐや姫の事実を今初めて知った翁達も、かぐや姫と同じように泣きました。



その様子を見ていた千尋は言いました。


「でしたら私がかぐや姫の代わりに月の都に行きます」


千尋の発言に一番驚いたのは翁達でした。


「そ、そんなことが出来るのか!?」


「多分出来ると思います。

...姫様は気づいているかもしれませんが、私はこの世界の人間じゃなく、神様に頼まれてやってきた人間です。


ですので、月の都に行く途中に神様に元の場所に戻してもらえば、出来るはずです」


するとかぐや姫は泣くのを止め、まっすぐな目で千尋を見つめました。


「......本当に、お願いしていいのですか?」


「はい。きっと成功するはずです」


「......じゃぁ、お願いするわ」


そして千尋は、かぐや姫が着ているような豪華絢爛な服に着替え、そのときを待ちました。