「ごめんなさい。私の話ばっかり聞いてもらって・・・・・。」



「鏡子・・・・・さん?」



「やっぱり・・・・・彼、ここに戻って来なかったわね。ゴメンなさいね。帰ります・・・・・お会計、これで足りるかしら?ここに置いておきます・・・・・じゃあ、私はこれで・・・・・」



時計を見て、再び席を立ち、



帰ろうとする鏡子を俺は呼び止めた。



「鏡子さん!!」



カウンターに置かれた1万円札を指差し、



「こんなにいりませんから・・・・・お釣りを・・・・・」



そして、気がついたら、



俺は・・・・・



俺の腕は・・・・・



背を向けた鏡子を、



後ろから引き寄せ、抱きしめていた。