立ち上がり財布を取り出す鏡子に、俺は、



「いえ、大丈夫ですよ。帰っていらしゃるまでお待ちするとお約束しましたから、私は約束を守ります」



と、言った。



俺の出来る限りの穏やかな口調は、



鏡子を安心させたのか、



鏡子は再び席に座った。



俺はまだ鏡子と会話らしい会話をしていないから、



引き止めておきたかったんだ。



いや・・・・・それより、



帰したくなかった・・・・・そんな言葉が当てはまるのかもしれない。



変な俺。



とっとと帰ってもらえば・・・・・



俺もラクなのにな・・・・・。