「吉住さんのこと、ずっと前から好きでした」
え? まあくん、何を言ってるの?
「吉住さんは覚えてないかもしれないけど、去年の4月、俺達駅で会ってるんすよ」
「駅……?」
去年の4月。
私は大学、まあくんは高校に入学したばかりの新入生同士だった。
まあくんが初めて私を見かけたのは、それぞれに入学式を迎えた4月上旬。
お互いが通学に使う共通の駅のホームでのこと。
慣れないスーツといつもより高めのヒールをはいていた私は、混雑する階段でバランスを崩し、よろけてしまった。
とっさに手すりをつかんだから転ばずに済んだものの、体勢を崩した拍子に片方のヒールが脱げてしまい、その靴は人混みにあふれる階段を数段転がり落ちてしまった。
自力で拾おうにも、通勤ラッシュを迎えたホームの階段は思うように進めず、ただただ階段のすみっこで立ち往生。
ヒールは何人かの足に蹴られ、大勢の人からうっとおしそうな視線を浴びている。
入学式が始まる時間は刻一刻と近付いているのに、全然ヒールを拾うことが出来ず、私は焦るばかりだった。


