真央実をふくめ、学生の大半は講義のかたわら車校に行って、免許を取っている。
そこで真央実は、同じ大学の男友達が何人かできたらしい。
黙ってても男から声をかけてもらえる真央実のことが、うらやまし過ぎるぞ。
小教室のすみっこで英語の授業を受けつつ、私は真央実の話を聞いた。
「飲むって、誰と?」
「それは、行ったらわかるよ。
17日の夜、空けといてねっ」
真央実は声を弾ませる。
空けといてね、って、もう決まってるのか。
展開についてけない。
教卓で授業を進める先生に気づかれないよう、真央実は小声で、
「この大学に、ネネのこと気にしてる人がいるんだよ」
と、ニヤニヤした。
「は!? そんなウソ、信じると思う?」
真央実の思わぬ発言に動揺し、それを隠すために怒り気味にそう言うと、真央実はもったいぶった口調で、
「ウソじゃないよ。
だいたい、ネネは卑屈過ぎるよ。
もっと自信もったら?」
「………」
出会いに恵まれた真央実にだけは言われたくないと思ったが、グッとこらえた。


