目を丸くして、ただただ空を見つめる私に、まあくんは得意げに言った。
「ね、綺麗でしょ。
特にこの時間の星は格別!
邪魔する光が少ないから、空が透き通ってるみたいで」
「ほんと、綺麗……」
ストレスや悩み事が、小さくなってゆく。
それくらい、無数の星達は私の心を無心にしてくれた。
「よかった。
吉住さんに気に入ってもらえて、嬉しい」
まあくんはそれだけ言うと、自転車にまたがった。
「もう帰るの?
せっかく来たんだし、少し部屋に寄ってく?」
寒さで赤らんだ頬をさらに紅潮させ、まあくんは首を横に振った。
「吉住さんに迷惑かけたくないから」
「迷惑なんかじゃないよ。
逆に、こんなとこまで来させといて、何もせず帰す方がムゴいじゃん」
「そうでしょうけど、俺だって一応男っすよ。
簡単に吉住さんの部屋に入れてもらうわけにいきませんって」
「まあくんは男じゃなくて子供だよ。
変な意識持たないでくれる?
ちょっとだけ、あったまっていきなよ。
あったかい飲み物もあるし」
まあくんのセリフに思いのほか緊張してしまったのを、子供扱いしてごまかした。
「また子供扱いする!
ひどいっすよ、吉住さん」
まあくんはむくれた。
お願いだから、今はそういうふざけた態度でいてほしい。
まあくんの男な面を見たくない――。


