玄関の扉を開けると、やっぱりまあくんがいた。
その傍らには自転車がとまっており、彼の額は汗に濡れている。
この寒空の下、私なんかのために、全速力で自転車を飛ばして来てくれたんだ……。
「意外に近かったっすね」
まあくんはそう言い笑ったけど、私は笑えなかった。
「本気で来ると思わなかった……。
なんで来たの?」
まあくんは袖口で汗を拭き、
「俺、学校チャリ通なんすよ。
距離的にはそれ往復するみたいな感じだから、余裕です。
言ってませんでしたっけ?」
「チャリ通なの?
初めて聞いた」
「それだけじゃなくて、来る途中、吉住さんにこれ見せたかったから」
言うなりまあくんは、空を指さした。
漆黒の空。
普段は見過ごしている天は晴れ渡り、雲ひとつない。
そこには冬の星座がきらびやかに浮かび、私たちにあたたかい星の光を降り注がせていた。
2月の真夜中。
とても寒いはずなのに、それを見上げた瞬間温度の存在を忘れた。
星の魅力に吸い込まれそうになる。


