考えているうちに、私の頬は涙で濡れていた。
こんなに芳が好き。
だけど、もう、続けていく自信がない。
芳はきっと、私に言われたくらいじゃ女友達との関係を切らないだろうし、よほどのことがない限り、男女の友情はあるという考え方を変えないと思う。
この先も似たようなケンカを繰り返したり、アイドルのポスターにヤキモチをやいて私だけ疲れる日々を過ごさなきゃならないのかな。
――別れ。
考えないようにしていた二文字が脳裏に浮かんだ。
悲しいほど鮮やかに。
私はもう、芳とは続けていけない――。
気持ちがかたまった時、窓に何かが当たるような音がした。
コツン、コツン、と、小石が投げられている。
私は弾かれるようにカーテンを開け、眼下を見渡した。
「……まあくん!!」
人通り皆無な夜の道路には、まあくんが立っていた。
もう寝ている家族を起こさないよう、私は足音を抑えて玄関に向かう。


