でも、電話に付き合ってくれたのには感謝してる。
まあくんのおかげで楽になれた。
まだ入っていなかったお風呂を済ませて体もサッパリさせると、芳とケンカした瞬間より気持ちは明るくなっていた。
今なら、芳と会っても素直に謝れる気がする。
洗面所のドライヤーで髪を乾かし、部屋に戻ってケータイのリダイヤルを表示。
芳に謝ろう……。
仲直りがしたかったはずなのに、なぜかまあくんの顔が頭に浮かんで、通話ボタンを押すことができなかった。
浮気なんてしてないのに、やましい気持ちに包まれる……。
電話で芳とケンカしたのは、6時間以上も前のこと。
頭を冷やし、お互いに冷静になっている頃。
そのはずなのに、私は芳からの連絡よりも、まあくんがウチに来てくれることを心待ちにしていた。
電車がないのに来れるわけがないし、こっちも待ちぼうけをくらってむなしい思いをしたくない。
ベッドに入って寝てしまおうかと思ったが、“もしかしたら”に賭(か)けて、私は起きていることにした。


