まあくんのセリフを適当に流し電話を切ろうとすると、
『じゃあ、吉住さんちの場所、教えてください』
打って変わって真面目な声に変わるまあくん。
私の胸はまた、高鳴ってしまった。
芳のことが好きなはずなのに、芳と仲直りしなきゃならないという意志とはまた別の何かが、動きそうになる――。
「言ったって来れないと思うよ。
まあくんち○○町だったよね?
そこから2駅越さないとウチ来れないから」
もう終電の時間はとっくに過ぎてる。
もうすぐ深夜2時。
まあくんが私の家の最寄駅に来るのは、不可能だ。
『これはウソじゃないですって!
今から行きます!』
「子供の冗談に付き合ってるヒマないの」
『吉住さんヒドッ!
また子供扱いした!
俺本気なのに!
場所教えてくださいよっ』
「○○駅の近くに、○○ビルっていう目立つ建物があるんだけど。
その正面にある、青い屋根した二階建ての一軒家。
期待しないで待ってる」
『わかりました!
今すぐ行きます!』
そうして電話は切れた。
絶対来るわけない。
車を持ってる芳ですら、運転が億劫(おっくう)だとか言って、まあくんちより近くに住んでるクセに二週間に一度しか来てくれないんだから。
まだ免許も持ってない高校一年生が、電車も使わず2駅分の距離をどうやって移動する気?


