まあくんに電話をかける前、自分のケータイの待受を見たけど、芳からは何の連絡もなかった。
あんな風に電話を無視したのだから、言いすぎてごめんねとか、会いたいとか、仲直りしようってフォローのメールが来るんじゃないかって、期待もあった……。
それを思うと胸は苦しくなり、私はまあくんに甘えることでグラつく心を支えた。
「……今回は、正直ちょっとつらい。
芳……あ、芳って彼氏の名前なんだけどね」
『はい』
「今度の春休みね、芳、男女のグループでスノボ旅行行くんだって……。
それだけじゃなくて、他にも……。
私と一緒にいる時に、結婚してる女友達と電話して楽しそうにしてたり……」
私は、芳との付き合いで我慢してきたことを、全てまあくんに話した。
付き合うようになってから、芳の部屋にアイドルのポスターが貼られるようになったこと。
貴重な二人っきりの時間に、マンガに夢中になられたことがあること。
全部、自分の中で割り切って、芳と良い関係でいるために気持ちの整理をしてきたつもりだったけど。
こうして話していると、全く割り切れてなんかいなかったんだと気付く。


