バレンタインゆえに、街のあちこちが賑やかさであふれる2月初旬のこと。
2~3月にかけてある春休みの計画をしたくて、芳と電話で話していた時、私の我慢は限界を越えてしまった。
見えないところで張り詰めていた精神の壁が、ガラガラと音を立てて崩れてしまったんだ。
「スノボやってみたいなー。
芳、やったことある?」
『あるよー。高校の時はしょっちゅう行ってた。
今ならまだ雪もあるし、長野辺りで予約する?
泊まりがけなら、早く準備した方がいいし』
「うん。そうしよ。
長野行くの初めてだし、楽しみだなぁ」
最初はそんな、楽しい春休み計画だったんだけど、
『そういえば俺、地元のツレともスノボ行くよ』
という芳の一言が、不穏な空気の引き金となった。
「……へえ。幼なじみとか?」
『うん。昔から付き合ってるヤツらなんだけど』
“達”と聞いて、私の胸は、一瞬にして不安で真っ黒になる。
『男女4人ずつで、山梨の清里行ってくる。
多分、泊まりになるだろなー』
「泊まりなのに、女の子もいるんだ……」
芳は私が不安になっているのを察し、
『大丈夫。おかしなことにはならないって分かりきってる関係だから。
高校ん時もよく泊まったりしてたけど、普通にみんなで雑魚寝してたし』


