「まあくんは真面目だね。
私が高校生だった時は、恋愛のことしか頭になかったよー」
「そうなんすか!?」
まあくんが、珍しく身を乗り出してくる。
いつもは恋愛系の話には全く興味を示さないまあくんが、そんなに関心を示すなんて。
面白いなと思いつつ正直驚いた。
「って言っても、私が一方的に好きになって終わるパターンばっかりだったけどね」
「でも、いま彼氏さんいますよね?」
まあくんはこちらの顔色をうかがうように、おそるおそるそう訊(き)いてくる。
私は頬をゆるめて、わざとノロケてみた。
「大学入ってから今の彼氏と知り合ったの。
その人が初めて付き合った人。
やっと幸せになれたよぉ」
「……よかったすね」
まあくんの言い方は尖っていて、全然祝福してくれてる感じがしない。
さすがにノロケ過ぎたかな。
他人のノロケ話なんてうざいだけだよね。
まあ、実際はノロケたくなるほどじゃないし、今の芳とは微妙な感じなんだけど、そんな暗い話できるはずもなく、
「そんなわけだから、まあくんもそのうち好きな人できるといいね」
と言い、無理矢理話を終わらせた。
弟みたいに親しみやすいまあくん。
まあくんといると、時々不思議な気分にさせられる。
新境地を見たようなさ。
芳とのモヤモヤした関係から逃げるための場所(バイト先)を失いたくない気持ちもあるけど、それ以上に、まあくんとは楽しく関わっていたいと思った。


