でも、私が言いたいのはそういうことじゃなかった。
電話の相手が結婚してるとか子供がいるとか、そんなことは関係ないし、むしろそれを聞いて嫌な気持ちになった。
私と会える時間が少なくなったのに、芳は寂しくないんだろうか。
私と二人でいる時間に女友達からの電話を取るなんて、申し訳ないとか思わないんだろうか。
私と顔を見て話をするより、結婚して子供のいる女友達と話すことの方が、彼にとっては重要なんだろうか。
芳の言動に引っかかりを感じたのは、そのことだけじゃない。
それまでは閑散（かんさん）としていた部屋のいたるところに、人気アイドルのポスターを貼り付けるようになったのだ。
一般人の私とは比べものにならないくらい、どの子も可愛い。
モデル体型。童顔美少女グループ。
元から自分に自信のなかった私だけど、芳のそういう行為は、私の自尊心を傷つけるのに充分なものだった。
どこまで嫌な気分にさせてくれるんだろう……。
付き合っている彼女（私）より、こういう子の方が好みだとでも言いたいんだろうか。
付き合う前にくれた「ネネちゃんがいい」って言葉も、とりあえず口説くため～みたいな、その場限りのウソだったんだろうか。
