「それはないよっ!」
芳は間髪入れずに言った。
「ネネちゃんが真央実ちゃんにそう思う気持ち、なんかわかる。
俺もそういう経験あるし」
私の劣等感に同意してくれたのは、芳が初めてだった。
まあ、こうやって誰かにそういうことを話すこと自体が初めてだからっていうのもあるけど。
アルコールの力ってこわい。
芳は、そんな汚くて情けなくて小さな私を見ても、好きという気持ちを持ち続けてくれた。
その瞬間、私は芳に惹かれていった。
一週間前は何とも思っていなかったどころか、芳のことすらよく知らなかったのに、会うたびに好きになる。
それからしばらくは、友達としてご飯を食べに行ったり、日帰りで遠出をしたりして、芳との時間を過ごした。
そうした時間の中で、最初は照れ屋だった芳も少しずつ自分を出すようになり、私も遠慮をしなくなっていった。
芳はとにかく、人の話を聞くのがうまかった。
私のつまらない話にも共感したり質問を返してくれたりして。
自分に自信のなかった私には、それがこの上なく気持ち良いことだった。
こうやってまともに話を聞いてくれる男、今までいなかったもん。


