女王様のため息


駐車場に下りると、見慣れた車が私を待っていた。

「お待たせ」

助手席に乗り込んでシートベルトを着けると、運転席にいた司がくくくっと笑いだした。

どうして笑っているのかがわからなくて、視線を移すと、司はハンドルの上に両腕を置いて肩を震わせてながら私を見つめていた。

「……何?」

「いや、彼女よりも彼女らしく助手席に座るなあと思って、さすがだよな」

笑いをこらえながら、ようやく話している司。

何がおかしいんだか。

そんな司が面白くて。

私も小さく笑って肩をすくめた。

「あー、彼女から何か言われた?しょっちゅう助手席に乗ってるしね。
別になーんもないのに、私たち。って、ちゃんと彼女に言ってる?」

「……まあな」

どこかのんびりと他人事のようにそう答える司は、小さく息を吐くと気持ちを切り替えるように。

「彼女じゃないのに彼女みたいな真珠ちゃん、何食べたい?俺は底なしに腹減ってるから何でもいいぞ」

「私もなんでもいいんだけど、じゃ、ラーメン」

「は?ラーメン?そんな気軽なものでいいのか?」

「うん。塩ラーメンが食べたい気分だから」

「ふーん、じゃ、いつもの店行くか?」

「いいねー。じゃ、私も底なしだから、早く行こう」

急かす私に了解、とつぶやくと、司はアクセルを踏み込んだ。