女王様のため息

「で、今日はこれからどうするんだ?暇ならどっか連れてってやろうか?」

海の何気ない声に、過去から記憶が呼び戻された。

目の前にいる海は、確かに男前な顔だけど、あの頃よりも引き締まって見えて、やっぱり二人で過ごした年月を感じる。

ま、私も老けたってことかな。

「今日、夕飯は司と食べることになると思う。さっきメールがきたから」

「は?」

「それが、司の普通なの。きっと、昨日おかしくなった私たちの雰囲気をもとに戻したいんだと思う。……仲のいい同期に戻したいって思ってるんだと、そうじゃないと仕事もしづらいしね」

へへっと、小さく笑って、肩をすくめてみた。

そんな私の態度が海の気持ちを逆なでしたのか、一気にその表情は硬くなっていった。

眉を寄せた顔はどこか震えていて、感情をどうにか抑えてくれてるんだとすぐにわかる。

「海の言いたい事はわかってる。だから、何も言わないでよ。
眉間に皺だよ。あまりそんな顔続けてると皺が取れなくなるよ。そろそろ年なんだから気を付けないとね」

「真珠は、それで……」

「それでいいわけないけど、どうにもできないよ。
私が司と一緒にいるだけで、司の彼女に申し訳ないってわかってるけど。
……私の気持ちがばれてしまったから、きっと、それもそろそろ限界かな。
きっと、司から距離を置かれると思う」

小さくため息を吐いて、自分自身で自分の言葉を受け止めた。

必死で隠してきた私の気持ちが司に知られた以上、これまで通りに付き合っていくなんてできないと思う。

彼女を大切にしているらしい司なら、きっと私との距離を作ってしまうとわかる。