「で?何があったんだ?夕べ、コンパに来ないどころか司くんと一緒にいたんだろ?」
「あ、うん、それは、ごめんね」
「いや、もういい。まあ、真珠の会社の綺麗どころ達と飲めて他のテーブルの男たちからの羨望の眼差しに気分良かったし」
「羨望?だよね、みんな綺麗だから、目をひくし、それに性格も良かったでしょ?社内の男ばかりじゃなくて女の子からも人気があるからね、おすすめだよ」
「おすすめは、まあいいとして、夕べ何かあったのか?」
「……」
敢えてなのだろうけど、少し空気が明るくなった。
海の飄々とした表情と軽い声音が、二人の間の温度を少し上げて、私の気持ちを浮上させてくれた。
これまで、司とのことを相談するでもなく、愚痴るでもなく話してきたせいか、いつの間にか海は私と司の事を誰よりも心配してくれる。
心配というよりも反対といった方が近いけれど。
血の繋がらない親戚だけど、それ以上に強固な信頼関係と、お互いを思いやる気持ちは強くて、その関係を守るためには嘘はつけない。
たとえ、相手を不快にさせたり、不安を助長するような結果になるのがわかっていても、嘘だけはつけない。
今までも、これからも、だ。
そう思いを強くして視線を上げた。
私の言葉に不安を隠せないような海は、それでも何も言わずに私の言葉を待っていてくれる。
「夕べ、キス、したの。初めて」
「……」
「……彼女には、申し訳ないけど、嬉しかったんだ」

