「真珠さんがこの5年間で携わった業務は、全て評価が高い。
うちの会社は設計部門が大手を振って仕事をしている状態で、スタッフ部門の位置は低く見られていたけれど、その現実を真正面から斬り捨てただろ」

「あ、まあそれはそうですけど、斬り捨てたつもりなんてないんですけどね」

なんだか居心地の悪さを感じてごまかすように笑った。

設計部門とスタッフ部門の立ち位置の違いはあからさま過ぎて、入社してからずっとそれを馬鹿にしてきた。

どちらも会社の両輪、うまくバランスがとれないと順調に会社は伸びないってわからないのかな、と新人ながらに上司に進言したっけ。

私からの言葉を受けた課長は、『お?』と面白そうな顔をして、それ以来何かと総務部の業務の全面に私を追いやっては他部署との折衝に当たらせた。

『何を言っても新人の戯言だと許される間に顔を売っておけ』

そう言ってはあらゆる私の素直な言葉を社内に浸透させ、私の存在を本社内外に知らしめてくれた。

部課長の会議にも書記として連れていかれ、工場見学会にはお茶出し係として同行を命じられ。

その都度あらゆる階級、あらゆる職種の面々との繋がりを作ってきた事が、総務部での業務に直接役立つ事も多かったし、他部署からの要請で自分とは普段関係のないイベントにも顔を出した。

濃淡はあれど、全社の社員との繋がりを持つ事が出来た私はそれだけで最強の武器を得たともいえる。

私が『女王様』と呼ばれる一番の所以はここにある。

ただ仕事を正確にこなすだけではない。

もちろんそれは必要だけれど、多くの量を処理するわけでもない。

社内での人脈と信頼を得ている私の事を、いざという時に頼る気持ち。

それが『女王様』という私への賛辞へとなったんだ。

私が入社以来築いてきた社内での繋がり、そして信頼関係が、『女王様』という私の呼称となっている。

……私自身、決してそれを喜んではいないけれど。