女王様のため息



入社してからずっと総務部で仕事を続けてきて、それなりにつらい事も悲しい事も経験したけれど、それは誰でも経験する事で、私一人が悔しい涙を流したわけではない。

思うようにすすめられない仕事にいらだったり、後輩たちに腹を立てたり。

そりが合わない役員とやりあった事だって少なくない。

そのたびに後悔と反省を繰り返しては強くなって、今の私がある。

「真珠さんが総務部にいてくれるだけでうまくいく業務は多いんだ。
実のところ、よその部署に持っていかれなくて、ほっとしてる。
はは、そんな頼りない部長だけど、これからも、よろしくな」

「部長……」

しんみりとした感情が私の目元を熱くして、口元も震える。

これまでのつらい事を全て乗り越えてこられたのはきっと、こうして私を認めてくれる人達が側にいてくれたからだ。

女王様なんて言われる私を笑って支えてくれて、ここぞという時には前面に出てきて守ってくれる頼れる上司たち、そして要領のいい愛すべき後輩たちに囲まれている日々が、今の私が私でいられる根源。

職場に恵まれている私って、幸せだなと、改めて実感する。

異動がなくなって、本当に良かった。

その時、肩に置かれた司の手が、少し力強くなって、思わず見上げると。

私以上に目を潤ませている司がいた。