女王様のため息


殆どが私達よりも若いメンバーたちで、その中にはきっと、司に憧れている女の子もいるはず。

まあ、司は人気があるからなあ。

それにしても、司に恋人がいたって事を私の目の前で聞いてくるあたり、若いってあっぱれだなと思う。

正直、美香さんとの事は今はもう不安に思う事はないけれど、それにしても、だ。

そんな私の気持ちを察したのか、司は私の両肩に手を置くと、そのままくるっと私を回転させて皆の前に私を向けた。

「確かに昔は付き合ってた女もいたけど、今は真珠だけだし、それは一生だから。結婚しても真珠が望めば仕事は続けるから夫婦ともどもこれからもよろしく」

頭上から聞こえる司の甘い声と、両肩に乗せられた司の熱い手が一気に私の体に染み入ってくる。

これまで、社内で私との結婚についてはっきりと肯定の言葉を伝えてきた司だけれど、ここまでしっかりとその言葉を聞かされたのは初めてで、それまで感じていた以上の恥ずかしさがこみあげた。

「ちょ、司っもういいから……」

思わず振り返ろうとしても、司の手の強さに固定されてそれもできず。

顔だけを後ろに向けて、キッと睨んだ……つもりだけど、顔に力も入らなくてぽわんと緩んだ表情しか作れない。

「このまま連れて帰るけど、みんなは二次会楽しんでくれ。
あ、部長、披露宴のスピーチお願いしますねー」

ちょうど近くを通り過ぎようとした部長に気づくと、司は声を張り上げて小さく頭を下げた。

「仲人が社長なんで、下手な事は言えないと思いますけど、よろしくお願いします」

嬉しさを隠そうともしないその声に、部長も苦笑するしかなくて、

「ああ、せいぜい真珠さんの事を褒めちぎるようにって社長からも言われたから期待してくれ」

「え?俺の事は?俺の事も褒めて下さいよ」

「何を言ってるんだ。総務部の女王様を嫁にできるんだ、文句こそあれ、褒めるなんてことはない。な、真珠さん?」

「え、そんな事」

からかうように笑うと、部長は小さく息を吐いて。

「大切なうちの女王様だ、一生ちゃんと支えてやってくれ。
運よくもうしばらくは総務部にいてもらえそうだから、みんなの女王様に変わりはないけどな」

優しくて、愛情のある声と瞳で司にそう言ってくれた。