その後ようやくお開きの時を迎えたのは、宴会が始まって三時間は経過した頃。
と言っても、終業時間を迎えてすぐに始めたせいで、まだ21時を回ってすぐだ。
ここ数か月の緊張感を話題と肴にして飲んだお酒はほどよく顔を赤くし、役職関係なく皆の雰囲気を解放感に満ちたものにしていた。
「二次会行く人は駅前のカラオケに行って下さいねー。
部長たち管理職様から軍資金たっぷりいただいてます」
「ありがとうございまーす」
幹事の一人の女の子が声をあげている横を通り過ぎ、二次会どうしようかと悩みながら靴を履いて。
鞄の中のスマホを取り出してちらりと見ても、相変わらず司からのメールも着信もなくて気持ちは落ち込む。
普段なら私からのメールには結構な速さで返事をくれるのに。
それに、私の異動がなくなったなんていう内容に何の反応もないなんて、どういう事だろう。
今日は現場に出る予定はなくて、終日本社にいると言っていたのに、急に出かける仕事でも入ったのかな。
それならその事を連絡してくれるはずなんだけど。
不安な気持ちを抱えながら、とりあえずお店の外に出ようとした時、
「真珠さん、二次会行きましょうよ。今日くらい存分に騒いでストレス発散です」
背後から後輩の女の子に声をかけられた。
ここ数か月、遅い時間までの残業で距離も縮まった部内のメンバーたちとのカラオケは、魅力的ではあるけれど。
「うーん」
司の事が気になってカラオケどころの気分ではないんだけどな。
けれど、私と一緒に二次会に行くことを期待している瞳を向けられると、簡単には断れない。

