「真珠さんほどではないですよ。細かい仕事全て引き受けて、ひたすらこなす姿は圧巻でした。それに、うるさい役員連中とも対等にやりあってたし、俺、惚れそうでした」
「またまた、そんな事言っても仕事は減らさないよ。
それに役員さんとやりあってたんじゃなくて、会話を楽しんでたんだからね、誤解をしないように」
「ははっ。まあ、そういう事にしておきましょうか。
でも、惚れそうになったのはマジです。
俺に彼女がいなければ、速攻せめてましたね」
お酒の勢いだろうけど、かなり饒舌になっている後輩は、それでも一定の距離を保ちながら笑顔で。
「でも、結婚されるんですよね。おめでとうございます。
仕事も続けられると聞いてほっとしてるんですけど、俺たち後輩だってやる時はちゃんとやるんで、安心して新婚生活を楽しんで下さい」
「……え?ああ、そうだね。結婚したら、どうしても今までよりもプライベートが忙しくなるだろうしね。期待してる」
司との結婚は、既に社内に知られていて、会う人ごとにお祝いの言葉をもらったりする。
私自身がその事を積極的に周囲に知らせているわけではないけれど、司が何かにつけて『真珠と結婚するんだ』と言っているのが大きな理由。
相模さんまでもが、聞かれれば正直に答えているし社長が仲人だという事も手伝って、司と私の結婚は、最近の社内の話題の的となっていて恥ずかしくもある。
きっと、以前の私ならこんな状況に辟易していたと思うけれど、司との結婚は、自分が気付いてなかったほどに私自身を幸せな気持ちにしてくれるうえに、しっかりと受け止める事ができる。

