女王様のため息



    *   *   *


その日は、総務部のメンバーは皆、終業時間となった途端に仕事を終えて会社を出た。

無事に株主総会が終わり、その慰労をねぎらう打ち上げだ。

総務部と総会の運営に尽力してくれた各部署の担当者での宴会は、今年は会社近くの店で『すき焼き』らしい。

総勢30人強の宴会は、総会が無事に終わった事による穏やかさに満ちていつもより和やかだ。

普段よりも緊張感が欠落しているのはきっと、プレッシャーからの解放感からによるもので、きっと今週いっぱいは続く。

総務部長にしてみれば、総会を無事に終わらせる事が一年で一番の大仕事で、極端に言えば今年の仕事は終わったも同然で。

「みんなお疲れ様」

乾杯の音頭でもどこか涙声になるのも仕方がない事。

入社以来何度か経験しているこの空気感だけど、やっぱりいいものだと思える。

かなり忙しい日々を送る事が強いられる数か月だけど、仕事に集中しなければいけない時期があってもいいと思う。

無事に終えた時の充実感は言葉にしようもないもので、この場で飲むお酒の美味しさは極上。

「真珠さん、お疲れ様でしたー」

「あ、お疲れ様」

後輩たちがビールを片手に席を回っているけれど、その様子はこの春に比べれば頼もしいものに変わっている。

勤続年数が浅くても否応なく戦力として放り込まれる仕事漬けの毎日を経て、皆が見るからにしっかりとしていて精悍になっている。

とはいっても、今はほろ酔い気分で赤くなった頬が可愛かったりもして。

「よく頑張ってたよね」

入社二年目の男性社員の頭をよしよしと撫でてしまった。