女王様のため息



とはいっても結婚が決まったばかりで遠方への異動は避けてあげようという工場長の判断で、たまたま新しく立ち上げられることとなった西エリア担当の研修部へ。

それまで設計一筋で頑張ってきたらしい彼女だけど、仕事を続けたままで結婚ができる喜びの方が大きかったらしくすぐに納得し、私の代わりに研修部への異動が決定した。

「というわけだ。結婚が決まった二人は幼馴染で、昔から付き合っていたってことなんだけどな、やっぱり会社の事を考えるとなかなか結婚もできなくて悩んでいたらしい」

「はあ」

「でも、まあいつまで悩んでも仕方がないってことで、結婚を決めて会社の判断を仰いで。そしてこういう展開になった。
真珠さんには色々と面倒な思いをさせて申し訳なかったけど、そういう事だ」

……そういう事だと言われて、頷くしかない私はしがない会社員。

反論なんてできるわけがない。

会社の決めた事に従って、与えられた仕事を頑張るしかない。

それは目の前にいる部長だって同じなんだけど。

それでもやっぱり、釈然としない気持ちが胸の中に湧き上がってくる。

結局は、女性が仕事を捨てなくてはいけないんだなと、複雑で納得できない気持ち。

今回は、どうして男性が異動って事にならなかったんだろうかと。

割り切れない気持ちでため息をついた。

そのため息は、私が研修部に行きたかったというため息では決してない。

むしろ本社にとどまる事ができて、嬉しいんだけど。

社内恋愛をしている私と司にもこの先起こるであろう問題だから、受け止め方も思わず重くなってしまう。

何かあれば、女性の仕事はないがしろにされているように思えて、悲しくなった。