女王様のため息


「はあ。工場から……」

話の展開がよくわからなくて、部長の言葉を待っていると、部長は苦笑しながら

「とりあえず、コーヒー入れてもらおうか」

「あ、気づかなくてすみません。入れてきますね」

部長の声に、急いで立ち上がった私を制するように、

「いいよ、若い女の子に入れてもらうよ」

そう言ってくれたけれど。

「若い女の子?すみませんね、私は若くなくて」

部長の言葉に傷ついたふりをして拗ねた声をあげた。

低くて冷たい私の声に堪える様子もなく、部長はふっと笑うと

「そうだな、真珠さんはまだまだ若いと思って、あ、ここでいう若いは入社年数が浅いってことだけどな。
いつまでも真珠さんは総務部にいると思って頼りっぱなしだったから、これからはもっと若い女の子たちを鍛えていかないとって思っただけだ」

「……私の異動がきっかけですか?そう思ったのは」

「まあな。真珠さんが異動するって決まって焦ったからなあ。
もっと気合いを入れて後輩を育てておけば慌てずに済んだんだけど。
これからは真珠さんだけに頼らずに仕事が進められるようにするかな」

ははっと乾いた笑い声をあげた部長は、部屋の扉を開けて、近くにいた女の子にコーヒーをお願いしていた。

『私はカフェの店員じゃないんですよー』

ふざけた笑い声が聞こえてきて申し訳なるけれど、とにかく今は、自分のこれからがどう動いて行くのかがわからなくて、意識はその事ばかりに向いていた。