女王様のため息



いつもなら、ここまで自分の気持ちを司に伝えないし、自分でもここまで素直になれて不思議に思える。

「相模さんにお昼をごちそうになって、言われたの」

「え?相模さん?なんで」

首を傾げて戸惑う司に、小さく笑ってみせた。

「明日の株主総会のリハの後に誘ってもらって。色々と話したんだ」

「えー、いいよなあ。俺も行きたかったよ。最近相模さん忙しくて一緒にいる時間がなかなか取れないんだよな。ちっ」

口元をぐっと寄せて、本気で悔しがっている司は異常に子供過ぎて、本気でそう言っているとわかる。

本当に相模さんが好きなんだなあ。

確かに魅力的な男性ではあるけれど。

「で?相模さんは何か言ってた?」

「ん?そうだね、言ってたよ。司が茜ちゃんを披露宴に呼ぶ代わりに新しい現場担当から外せて脅したって事」

「げっ。相模さん……余計なことを。いや、脅迫じゃないんだよ。
取引っていうか駆け引きっていうか。交換条件っていうか。
……まあ、その、ギブアンドテイクってことだ」

焦る司の顔は真っ赤で、よっぽどその事を後ろめたく思っているように見えた。

ふうん。とりあえず、罪悪感を感じてはいるんだな。

暁の演奏を引き換えに現場を断るなんて、それも上司相手に。

サラリーマンには言語道断の行動だ。

「相模さんがいい人で、あれだけ親バカだから許してくれたけど、他の上司相手なら怒って、どこか遠くに飛ばされるよ」

呆れたようにため息を吐くと、司もははっと苦笑した。