けれど、やっぱり司は司であって、何か思いついたような悪そうな笑みを浮かべると。
「じゃ、そんな真珠の気持ちには、今夜たっぷりと応えてやるから楽しみにしておけよ」
いつもよりも甘い二人の空気に、心から幸せを感じた。
気持ちを重ねて、一緒にいられる事が、何よりも大切だと、そのためなら仕事の方向性を変えられる強さが必要だと。
相模さんから教えられ、ようやく伊織と再会できた暁からもその大切さを感じた。
こうして愛し合える奇跡を当たり前だと思わずに、そしてずっとずっと気持ちが続いていくように。
「司の事を、諦めないで良かった」
「な、なんだよ、突然。今日の真珠、妙に素直でやりづらいっていうか照れるっていうか……かわいすぎて困るんだけど」
私の思いを素直に出せば、途端にひるんでしどろもどろになる司が心底愛しく思える。
こうして私を愛してくれる司の気持ちを当たり前だと思わずに、もっともっと素直にならなければ、努力しなければ、と気づいて。
「もっとかわいいって言ってもらえるように、司の事を大切にするから。
それに、司が私をちゃんと愛してくれる私であるために、いい女になるから」
「お、おい。本当、どうしたんだ?」
せっかく素直になってる私に、どう答えていいのかわからないような司は、手にしていた箸を箸置きに置いて、大きく息を吐いた。
どこか訝しげに私を見遣る視線には不安が混じっていて、私をどう扱っていいのか戸惑っているのがありありとわかる。
確かに、女王様と呼ばれる私だから、いつも気を張って、精一杯の力を出して仕事をしているし、仕事を離れても女の子らしく甘える事も素直になる事も滅多にないから。
「どうもしないけど、やっぱりどうかしたのかな。
……ごめん。でもね、やっぱり司と一緒にいられる事がすごく幸せで……」
気持ちをちゃんと口にしようと決めた。
「本当に、司を失いたくないから。司の気持ちが私から離れていかないように、努力する」
「えっと……真珠?どうしたんだ?俺は、真珠から離れるつもりはないし、真珠を手放すつもりはないから」
「うん。ありがとう」
「だから……そんな必死で考えなくていい。
毎日真珠が俺の側で俺を好きでいてくれればいいから。
もっと気楽に一緒にいよう」
どこか慌てた口調からは、この流れが意外過ぎて理解できていないのがありありとわかる。

