「男なんて単純なんだ。惚れてる女と自分の人生がリンクして、一緒に生きていく事さえできれば、後はもうその人生をまっとうするだけ。
その願望が現実となって手に入ったなら、何でもできる気がして止められない」
「……」
「司は、真珠さんとの未来を手に入れて、真珠さんを少しでも幸せにしたいっていう気持ちが生きる基盤になったから、コンクールで大賞を獲れば仕事もやりやすくなるし、出世すれば真珠さんが喜ぶって思ったんだろうな。
今まではそんな事必要なかったけど、真珠さんを自分が幸せにしていく為に必要ならなんでもするんだ」
まるで司の気持ちを見透かしているかのように、相模さんの口からスラスラと出てくる言葉には小さな躊躇も感じられなくて。
納得させられるに足りる真実味があった。
その表情は穏やかで温かく、普段見せる仕事中の鋭さは全く感じられない。
まっすぐに前を見ながらも、その視線の先にはきっと、大切な奥さまの葵さんや双子の子供たちが見えているはず。
司が何度か
『相模さんのあの家族へのぞっこん具合を、マスコミに流すと金になる』
ぶつぶつ呆れたように言っていたけれど、今ならそれも信じられる。
社内での様子や、仕事への向き合い方しか知らなかった私には、相模さんが人間らしく見えて更に素敵だなと思えた。
司が心底憧れて、今までの人生を相模さんに向けて捧げてきたというのもわかる気がする。
そして、相模さんも司の事を大切に育ててくれていると感じて嬉しくなった。
心がほっこりと、軽くなったのを感じながら歩いていると。
相模さんは更に言葉を重ねる。
「司は、才能はあるし努力もするけれど、結果を求めないというか何の為に仕事をするのかも見えてなかったんだ。
でも、今は真珠さんを幸せにする為に設計してる。
今まで発揮してこなかった力がこれからどんどん表に出てくるんじゃないか?」
嬉しげな口調は、相模さん自身それを喜んでいるようだけど、私はそんな司の全てを受け入れて納得していいのか、複雑な心境になった。

