女王様のため息



相模さんが言う『設計デザインコンクール』は、今後の建築界の質の向上を目指し、会社や業界の垣根を取り払って催されるコンクール。

相模さんは過去に史上最年少で大賞を受賞しているし、今では殿堂入りして審査委員を務めている。

「うちの会社でも何人も受賞者が出てるし、若手ならとにかく欲しい賞だと思うんだけど、司は全く興味を見せなかったんだ」

思い返すような相模さん。

「俺は、司なら大賞をいずれは獲るって思ってるんだけど、いつも『俺はいいです』って逃げるだけで、欲がないっていうか。
あいつには、将来こうなりたいっていう気持ちも感じられなかったんだけど」

「はあ……」

「でも、真珠さんとの結婚が決まった途端、来年はコンクールに挑戦するって言い出すし、今までより仕事のペースはあがるし。
……わかりやすい男だよな」

笑い声と共に聞かされた言葉に、私はどう答えればいいんだろうか。

コンクールに挑戦するっていうのも、仕事に燃えるっていうのも悪い事じゃないし誉めてあげてもいいかと思うけれど、逆に言えば。

「今まで、司って仕事に手を抜いてたんでしょうか?」

思わず心配になってしまった。

司の事に関して、今まで悪い評判を聞いた記憶はないけれど、相模さんの言葉は私を一気に不安にさせる。

そんな私の気持ちが顔に出たんだろう、相模さんは少し焦って。

「いや、手を抜くなんてあいつの性格を考えたらそれはないよ。
少しは気楽に考えてのんびりやれって思うくらいだ」

「じゃ、どうして今更……コンクールに挑戦なんて」

司が本気で望むのなら、挑戦してもいいと思うしできるだけのサポートをしようと思うけれど、これまで避けていたものに今更どうしてって思ってしまう。

「真珠さんが戸惑うのも無理ないけど、今、あいつは無敵なんだ。
だからなんでもやってやろうって気力十分。
いい意味で周りが見えてないって事」

「無敵……」