女王様のため息


「司に言われたよ。俺が葵と結婚する時はそれだけしか考えられなかったはずだって。
本当に欲しい女を手に入れる事ができて、それを基準に人生を設計できる幸せを満喫したかったはずだって。
……仕事だけじゃなくて、プライベートにも生意気な男だよな」

私に同意を求めるように視線を向けると、小さなため息を吐いて、

「あの現場は司にとってはいい勉強になる大きな案件なんだ。
是非担当したいって名乗る若手も多いのに、司にとっては真珠さんに勝る案件はないらしい。
これから似たような案件が出たら回して下さいってさらっと言ってのけて笑ってたよ」

「あ、本当に、すみません……まだ間に合うなら、私がもう一度説得してみますけど」

肩を落としている相模さんに、慌てた私は思わず声も裏返ってしまう。

司のためになるなら、結婚ももう少し先に延ばしてもいいし、別居婚になっても我慢しよう。

私が我慢すれば、全て丸く収まるなら、そうしようと瞬時に覚悟を決めたけれど。

「いや、真珠さんの気持ちはありがたいんだけど」

申し訳なさそうな表情で呟く相模さん。

どこか落ち込んでいる様子が、私を不安にさせる。

「司から賄賂をもらったようなもんだから、これ以上あいつに俺の気持ちを押し付けられないんだ」

「は……?賄賂?」

「ああ。俺も司と同じで、一番大切なのは、愛する家族だってことだ」

言いづらそうに顔を歪めているその様子に、一体何があったんだろうと、更に不安が募る。

司、何かした?