女王様のため息


もともと相模さんの部下だった葵さんも建築の仕事をしていて、今でも知り合いの設計事務所で仕事をしていると聞く。

相模さんに子供がいるのは知っていたけれど、双子だったっていうのは初めて知った。

「で、茜が毎日聴いているCDは、神田暁のCDなんだ。
茜が言うには、いつ聞いても優しい気持ちになれる演奏らしい。
俺には音楽の事はよくわからないんだけど、彼女の心にはそう響くようで。
で、司と真珠さんの披露宴に俺と葵を呼んでもらったけど、神田暁も真珠さんの高校の同級生だったから、演奏に来てくれるって司から聞いて」

「暁は、確かに同級生で、披露宴では演奏してもらう事になってるんですけど。
……じゃ、茜ちゃんにも披露宴の席を用意させてもらえばいいでしょうか?」

そう聞いた私に、相模さんは大きく首を横に振った。

「わざわざ席を用意してもらう事もないんだ。
演奏の時に、会場の片隅にでも入れてもらえれば、茜も満足するだろうし。
きっと、プロの演奏を間近で聞けば彼女の励みになるから。
親バカだけど、その手紙を書いてる茜を見ると、どうしても願いを叶えてやりたかったんだ」

私の手元の手紙は、茜ちゃんが私宛に書いた手紙らしく、封筒の中には手紙以外にも、きっとお気に入りに違いない幾つかのシールも入っていた。

おはじきシールと呼ばれる、今はやりの分厚くしっかりとしたシール。

それを手にすると心が和んでくる。

多分、いくつも持っているシールの中で吟味を重ねた大切なシールのはずだ。