かといって、この雰囲気は私から何の答えもなくうやむやに済ませられるような簡単なものでもなさそうで。

肩を落として苦笑い。

そして。

「私は、司と結婚するよ。もう結納も終わってるし、入籍もすぐにする。
司は私の事を愛してるし、私も同じだから、今はすごく幸せ。
たとえあなたが司に告白したからといって、私と司との関係が変わる事はないってわかってるから大丈夫なの。
そして、あなたの質問に答えるとすれば、司の事は好きよ」

彼女達から聞かれた事以上の事を言ってしまったな、と瞬間焦ったけれど、そんな揺れを顔には出さないでいた。

彼女達がこれから司との付き合いをどうしていくのかはわからないけれど、とりあえずは最善と思える言葉を返したと思う。

彼女達の気持ちもわからないわけではないし、好きな気持ちをストレートに露わにできる事に羨ましさもある。

私にはそれが欠けてるしなあ。

若さゆえ、恋愛への情熱ゆえ。

彼女達が今ここにいる感情は理解できるけれど、それでもやっぱり。

「私にはまだまだ仕事があるから、話が終わったなら帰ってもらえるかな。
総務部全体の、この忙しい空気を読んで欲しいんだけど」

冷たくそう言い放つ私。

目の前のかわいい女の子たちにしてみれば、私は女王様なんかじゃなくて魔王様かもしれない。

私の言葉を聞いて慌てた彼女たちは、周囲からの冷めた視線を感じ取ったようで。

居心地の悪さを隠そうともしないまま

「や、やだ」

口々にそう呟いて帰って行ったけれど。

司に告白すると息巻いていた女の子は去り際に

「私、宗崎さんが好きです。だから、気持ちは伝えます」

悲しげに笑っていた。

寂しげな後姿を見ながら、司も罪なオトコだな、と余裕ぶる私。

そんな私もヤな女なのかもしれない。

こんな風にヤな女になってしまう余裕こそが司を信じている証なのかもしれないけれど。