視界の隅にいる司の存在を意識しながらも、話しはじめると思いがけなく正直な気持ちが溢れだして、偽りのない単純な司への感情が言葉になった。
「しーちゃんね、ずっとつーくんのことがだいすきだったのよ。
これからも、ずっとそうだから。だからおよめさんになるの」
大きな瞳を輝かせる恵菜ちゃんをそっと抱き上げて、膝の上に座らせると、その温かさに大きな幸せを感じる。
司との縁がきっかけで、こうして恵菜ちゃんとも知り合えて。
「しーちゃんはね、えなちゃんともこれからずっといっしょだよ。
それも、とってもうれしいよ」
恵菜ちゃんの頬にかかっている髪をそっと指先で後ろに梳いて、ふふっと笑うと幸せが胸に満ちてくる。
そしてその時、同時に聞こえたのは。
「うわあ、いい時に来ちゃった。司、本当に惚れられてるねー。あまりにも真珠ちゃんの言葉が甘くて、声かけそびれちゃった」
私の背後にある部屋の入口に立っている綺麗な女性の呆れたような声。
……もしかして。
「あ、司の姉の恵です。で、恵菜の母親。
恵菜を長い時間みてくれてありがとうね。忙しくて、挨拶に来るの遅れたけど、おかげでいいもん聞いちゃった。後で母さんにも言っておかなくちゃね。
『バカップルを見たっ』って事細かに今の真珠ちゃんの言葉も言っておくねー」
「姉貴っ、余計な事言うなよ」
怒ったような司の声。
司のお姉さん、恵さんは、そんな声はあっさりと無視して、更に続ける。
「司が真剣に惚れた女の子ってどんな子だろうかと思ってたけど。
それだけ司を好きなら文句はないわよ。
もちろん結婚には賛成だから、こんなに綺麗な真珠ちゃんに逃げられないように早く籍だけでも入れておきなさい。
きっと、父さんも母さんも反対なんてしないよ」
司の押しの強さを上回る勢いのあるその言葉に、私は何も言い返せなかった。
司が強引に物事をすすめるのは、遺伝子の働きのせいかもしれないな。
結婚して、私はついていけるのか不安も覚えるけれど、気持ちはすごく、温かかった。

