「そ、そうだよね、つーくん、にんじんきらいだよね。おいしいのにね」
それは、昔からずっとだ。食事をしていても、いつも人参を残している。
子供って、周りを良く見てるんだな。
「そうだよ、おれはにんじんがきらいだよ。うさぎさんみたいににんじんはたべられないけど、だいすきなひとといっしょじゃないとさみしいのはいっしょなの」
……かなりなげやりな言葉。
「ふーん。だから、だいすきなひととけっこんするの?」
「そうだよ。そこのしーちゃんとけっこんしてまいにちいっしょにいるんだよ」
その言葉に、恵菜ちゃんは勢いよく私を見た。
「しーちゃんは?しーちゃんはつーくんがすきなの?」
「……は……」
真面目に聞いている恵菜ちゃんに、どう答えたらいいんだろうかと、思わず口をつぐんでしまって、助けを求めるように司を見ると。
にやり、ふふん、という表現がぴったりな、まさにしてやったりの顔で司は口角を上げて笑っていた。
そして、困っている私に向かって
「恵菜が教えて欲しいんだってさ、しーちゃんはつーくんが好きなのかって。
な、恵菜?」
な、なんて意地悪な男だ。
私に言わせようとしてわざと。
わざともったいぶった言葉で恵菜ちゃんを味方につけている。
「さあ、教えて欲しいなあ、しーちゃんの気持ち」
みえみえにゆっくりと話してる司にむっとするけれど、たとえ恵菜ちゃんという子供が相手でも、嘘の気持ちは口にしたくない。
照れくさくてどうしようもないし、こんな状況を楽しんでいる司にむっとするけれど。
それでも、やっぱり素直に口にしてしまう。
ようやく口にできる幸せを手にしたんだから、正直に言葉を紡ぎたい。
「しーちゃんはね、つーくんのことがだいすきなのよ。
およめさんになれることがとってもうれしいの。
つーくんもさみしがりやのうさぎさんだけど、しーちゃんもつーくんがいなきゃないてしまう、うさぎさんだよ」

