女王様のため息


「それにね」

恵菜ちゃんの『つかさのひみつおしえますコーナー』はまだ続いているようで、再び恵菜ちゃんに気持ちを戻すと。

「つーくんね、いちばんだいすきなひととけっこんするんだよ」

「え……?」

「おかあさんがいってたもん。つーくんはいちばんだいすきなひととはなれてるとさみしくてしにそうだからけっこんするんだって」

すごい秘密を教えました。

みたいな自慢げな表情を浮かべて、恵菜ちゃんはにっこりと胸を張った。

司の事をなんでも知ってるよとでもいうように誇らしげだ。

「え、えな、もういいから、ごはんたべろ」

恵菜ちゃんの言葉にむせながら、司が慌てて割って入ってきた。

「つーくん?」

「えながいってることはまちがいじゃないけど、いまはいわなくていいから。はやくごはんたべよう」

真っ赤な顔の司は、恵菜ちゃんが言った事に照れているのか、恵菜ちゃんの手元にあるデザートを近くに寄せて、ほれほれ、と恵菜ちゃんの意識を向けようと必死。

「つーくん、だいすきなひととけっこんするの?」

司の言葉なんか聞き流しているように、相変わらずそのことにこだわっている恵菜ちゃんは、司の瞳に見入る。

わくわくとした気持ちを隠す事なく返事を待っている恵菜ちゃんに、しばらくは黙って様子を見ていた司だけど、結局は小さく息を吐いて。

「うさぎなんだよ、おれは。だいすきなひとといっしょじゃないとさみしくてしんじゃううさぎ。だから、けっこんするんだよ」

「うさぎ……。ほいくえんにいるうさぎさんといっしょ?」

司は、半ばやけっぱちになりながら恵菜ちゃんに答えていて、それとは反対に、恵菜ちゃんはっじっくり色々考えをめぐらせている。

「つーくん、にんじんきらいなのに」

首を傾げる恵菜ちゃんがあまりにも真剣で、二人のやりとりを見ていた私は思わずぷっと噴出した。