和室に通されて、司と恵菜ちゃんと三人ゆっくりと昼食をいただいているけれど、そう言えば司のお母さんも『少し待っててね』と言ったまま戻ってこないし、司のお姉さんに至ってはまだ顔を合わせてもいない。
ちょうどお昼時で、予約の団体さんが大勢来ているらしい。
もしかしたら、こんな時間に訪ねてきた私って迷惑をかけるだけだったんじゃないだろうか。
一気に青ざめていくような気がした。
はっと司を見ると、私のそんな思いを予想していたのか軽く笑って。
「いつ来ても忙しいから、いいんだよ。それに、恵菜の相手してやるだけでも感謝されているはずだ。こんなに小さいくせに、店が大好きで、いつも店の中をうろうろしているから大変だって言ってるし。
ま、そのうち落ち着いたら母さんも姉さんも顔を出すさ、それに、父さんも調理場が落ち着いたら来るって言ってたし。とりあえずのんびりしてろ」
私を安心させるように笑ってくれるけれど、今日は司の事をあまりにも知らな過ぎる自分に驚き過ぎて、情けない。
知り合って長いけれど、やっぱりこれまでは単なる同期だったんだなと改めて実感した。
恋人同士になって初めて知る事ばかりで、私の受け入れ許容量はいっぱいいっぱい。
司がどれほど私の事を愛してくれているのかも予想を超えるほどの大きさで、
こんなに有名な老舗料亭の息子だったなんて、考えもしなかった。
この先、恋人として、そして夫婦としての関係を続けていく中で、もっともっとお互いを知っていくんだろうとは思うけれど。
「……早く、驚き慣れしたい」
「は?」
「あ、えっと。司の事、知らない事ばかりで、いくつ心臓があってももたない感じで。早くそんな驚きにも慣れてドンと構えられるようになりたい」
気弱な声で呟いた。
会社でいつも見せる女王様ばりの強気な口調とは全く逆の私に、司はくすりと笑って。
「手の内明かすようで悔しいけど、そうやって驚いて戸惑ってる真珠を見たくて今まで黙ってたんだよ」
「は?」
「ま、そういうこと」
「そういうことって言われても、わかんないんだけど」
箸をすすめながら、にこにこ笑っている司は、私の拗ねた声に肩を竦めた。

