女王様のため息


  *  *  *


そのあと、私の住むマンションまで送ってくれた司は、車を停めるとハンドルに体を預け、小さく息を吐いた。

……遅くまで付き合わせて、悪かったかな。

「おごってもらった上に送ってもらってありがとう。いつもごめんね」

「ごめんね、って思ってないくせに」

横目で私を見た司は、くすりと笑った。

ただでさえ整っている顔が、街灯の魔法なのか、いつもよりも更に端整なものに見えてどきっとする。

同期入社だから、付き合いも長いのに、平常心で司を見るのは慣れないし、見られる事にも慣れないな。

入社式で、新入社員代表に選ばれて二人で挨拶をした事がきっかけで親しくなった私たちは、それ以来ずいぶん一緒にいる。

それなのに同期としての関係は崩れないままだ。

学生時代からの彼女がいる司には、そろそろ結婚も近いという噂もある。

見た目麗しく、仕事もできる司を狙っている女性は社内にも多いけれど、その中の誰とも噂になったことがない。

ぶれる事なく彼女一筋だという司に、社内の人気は更に右肩上がり。