女王様のため息



私の左手を握る手は小さくて、着ているTシャツもコンパクトでかわいい。

3歳くらいかな?

「えな、こんにちは、だろ?」

隣にいた司がしゃがんで、女の子と目の高さを合わせた。

「おねえちゃんは、しんじゅ、っていうんだ。ちゃんとあいさつできるか?」

「うん。つーくん、だっこ」

両手を広げて司に抱っこをねだる『えなちゃん』は、大きな目が印象的な色白美人。

こんなに小さな女の子だけど、既に顔は出来上がっていて、将来は絶対美人になるだろうなと確信する。

「よし、だっこだな」

司に抱き上げられた恵菜ちゃんは、近くなった私の顔を恥ずかしそうに見ながらも、しっかりと挨拶してくれた。

「こんにちは。えなです。つーくんのたいせつなおひめさまです」

かわいらしい声は、緊張している私の気持ちにじんわりと届いて、司の実家に来て以来の気持ちをほぐしてくれるようだ。

「こんにちは。しんじゅです。なかよくしてね」

そっと恵菜ちゃんの頭をなでると、恵菜ちゃんはゆっくりと

「しん……じ……じゅ、ちゃん」

言いづらそうに顔を歪めて私の名前を口にした。

初めて聞く名前だし、しんじゅなんていう響き、あまり口にしないのかな。

恵菜ちゃんは、うまく言えなかったのが恥ずかしいのか、俯いてしまった。

そんな小さな恵菜ちゃんがかわいくて、

「つーくんのおよめさんになるから、しーちゃんでいいよ」

俯いている瞳を覗き込むように腰をかがめてそう言った。

「しーちゃんって、言ってほしいな?」

恵菜ちゃんを抱っこしている司を見ると、私と恵菜ちゃんを交互に見ながら苦笑いを浮かべていた。

俯く恵菜ちゃんの体を抱っこしたまま左右に揺らして背中をぽんぽんと叩いて。

「えながおれのおひめさまなら、しーちゃんはおれのじょおうさまなんだよ。
ふたりがなかよくしてくれたら、おれはすごくうれしいんだけどな」

恵菜ちゃんの耳元にそっと囁いた。

その言葉に反応した恵菜ちゃんは、すっと顔を上げると、私の顔をじーっと見つめた。

まるで私を品定めするように、わからない何かを探ろうと、何度もまばたきを繰り返しながら。

「ねえ、じょおうさまってなあに?」

首を傾げた。

か、可愛い……。

どことなく司の表情に似ている恵菜ちゃんは、司のお姉さんの娘さんで、この料亭のアイドルだと聞いたのは、それからすぐだった。