女王様のため息



そして20分ほど車を走らせて到着したのは、見上げるほどの構えを持つ『高級料亭』だった。

「ここが司の実家?」

車を降りて、呆然と呟いた。

「実家はもう少し歩いた所なんだ。ここは店だけで、父さんも母さんも通ってる。実家の方がいいかとも思ったんだけど、今日の夕方から大きな宴会があるらしくて忙しいみたいだな。
朝早くからこっちに詰めてるんだ」

「へえ……」

「昼飯用意してくれてるから、行こうぜ」

私の腕をとって、安心させるように頷いた司は、

「店構えは大きいけど、特に緊張する事ないから。普通の和食料理屋だから気軽にしてろ」

「気軽……とはいっても」

普段料亭なんて利用する機会は滅多にないし、おまけにどう見てもかなりの高級感。

石庭とも言える、玄関に導いてくれる路は灯篭も並んでいるし、母屋ともいうべき建物の周囲には何本もの竹が植えられていて。

あ、あれは桜の木かな。

うわっ池まであるし。

向こうに見える芝生の青さも目に眩しい。

「どこが普通の和食料理屋?それに、一体誰がこんな高級料亭を使う?」

慣れない緊張感からか、ぶつぶつと言葉が飛び出てくる。

そうして気持ちのバランスをとっているようだ。

「ん?政治家とか、よく使ってくれるみたいだぞ。政治で大きな動きがある時とかは、店の周辺にはマスコミが張り付いて面倒くさいって母さん文句言ってるしなあ」

「政治家……あ、そう」

その言葉にも素直に頷けるくらいの雰囲気と歴史を感じるお店に、さあ一歩。

お店の正面から入っていいんだろうかと一瞬迷ったけれど、すたすたと入る司の背を追うように入ると。

「あ、来たっ。司と結婚してくれる我が家の天使がっ」

淡い黄色の着物を身にまとった女性が私達を見た瞬間にそう大声を上げた。