女王様のため息




   *   *   *


「今まで生きてきた中で、一番恥ずかしかった」

「……俺も」

大きく息を吐いて、流れる景色を見る。

それでも、どきどきしている鼓動はなかなか落ち着かなくて、顔は熱いまま。

運転している司を見ると、私と同じようにほんの少し顔が赤い。

「あれって、もしかしたら犯罪なのかな?」

くすくす笑う私に、

「まさか、大丈夫だろ」

おかしそうに答える司。

にやりと笑いながら、思い返すように肩を震わせている。

きっと、まだ恥ずかしくてたまらないんだろうけど、あんな経験もう二度としたくない。

「結構な人数が集まってたよな」

「……だね」

さっき、コンビニの駐車場に車を停めて、私と司はお互いの思いを伝えあいながら、次第に高揚した感情に素直に従うかのごとく。

抱き合っていたのはほんの短い時間だと思うのに、実はそれなりに長い時間だったのか、気づけば車の周りには人が集まっていて、私達の様子を覗き込んでいた。

ほとんどは高校生たちで、部活に向かう前にコンビニに飲み物でも買いに来たのか集団で私達をじっと見ていた。

その口元には『いいもん見たぞ』というような笑みも浮かんでいて、男の子も女の子も、面白そうに車を覗き込んでいた。

それに気づいた私達は、慌ててお互いから離れた後、車を動かしたけれど、最後の最後までたくさんの視線に追われていた。

ただ抱き合っていただけで、それ以上の事をしてなかったことがせめてもの救い。

キスでもしているところを見られたら、一生それがトラウマになって車には乗れなくなりそうだけど、とりあえず、被害は最少、恥ずかしさは最大。

本当、慌てたな……。

それまでお互いの言葉に酔いしれて、世界中で二人きりみたいな甘い世界を楽しんでいたけれど、そんなこんなで一気に現実へと戻された。

「この混乱している気持ちを抑えて、顔もしゃきっとしなきゃ、司のご両親に気に入ってもらえない」

両手で軽く頬を叩いて気持ちを落ち着かせる。

助手席に座ったまま深呼吸したり、目を閉じてさっきの恥ずかしさから気持ちを逸らそうとするけれど、やっぱり完全に冷静にはなれない。

「とりあえず、顔だけでも普段通りにしなきゃ」

焦りながら何度もほっぺを叩いた。