女王様のため息



司は、私が握りしめている手をそっとはずして、そして両手で私の頬を包み込んだ。

「こんなに、いい女だとは思ってなかった。俺が何も言わないのに、何があっても俺についてくるって覚悟をしてくれるほど強い女だとも思わなかった」

額と額が今にも触れ合いそうな距離まで顔が近づいて、司は私に気持ちを落とし込んでいく。

「俺を好きだと言ってくれた気持ちを疑ってたわけじゃないけど、海くんとの絆が不安で、真珠の気持ちを信じきれなくて、ごめん。
心配で眠れなくて朝も早くから起きて。
いっそ海くんのお父さんのお店まで迎えに行こうかとも思ったけど」

そっと視線を下に落とした司は、後悔にも似たため息を吐いた。

「俺を好きだと言ってくれた言葉と、二人で選んだ部屋を信じて、どうにかそれは堪えたんだけどな、やっぱり落ち着かなくて。
結構早くから駅に来て待ってた」

口調は淡々とあっさりとしているけれど、語尾には後悔と、どうしようもない自嘲が込められているようで、私の気持ちにも棘のように刺さってしまう。

なんだか、切ないし、痛い言葉だ。

「俺、真珠の事になると、もうダメなんだ。
今までずっと、俺のせいで距離を作っていたくせに、いざ全部の壁を取っ払って俺のものにできた途端、心配で不安でしょうがない。
俺から離れていく理由は思いついても、俺を愛し続けてくれる理由は思いつかないんだ」

「司、じゃないみたい」

ぽつりとこぼれた私の言葉に、司はためらいがちに視線を上げた。