「はあ?」
「え?だって、司はさっきも駅で女の子からちらちらと見られてたんだよ。
かなり見た目麗しくて注目浴びやすいから仕方ないって落ち込んでたのに、そんな司を落ち込ませるくらいに、私の事を心配してくれたんでしょ?
私って、すごい女?」
司の腕を掴んで、『ねえねえ』と左右に揺らすと、そんな私に戸惑ったみたいに
「あ、ああ……。すごい女だよ」
呟いた。
「結婚しようって約束して、昨日は私の両親に挨拶もしてくれたのに、それでも私が海に取られるかもって不安だったなんて、どこまで私の事が好きなんだって女冥利につきるよ。
ふふ、司、本当に心配性で、とことん私の事が大好きなんだね」
肩を竦めて笑って、司を安心させるように見つめた。
確かに、海への気持ちは単純に語れないし、正直、初恋かもしれない。
兄さんの結婚がなければ、もしかしたら恋人にまでなっていたのかもしれない特別な男だ。
それでも、海も私も、お互いの未来の面倒な事まで背負ったり解決したりしようとする事はなかったから、未成年の恋愛はできても、大人の付き合いまでは発展しなかったと言い切れる。
まあ、今朝しんみりと過去を振り返る時間を味わって切なかったけれど。
これは司には秘密。
「とにかく、司とは一緒にいたいし一緒に未来を過ごしたいから、どんな面倒な事も重すぎる障害も乗り越えるつもりでいるのに」
「ん、わかってるっていうか、実感した」
力なく笑う司。どうしてそんなに自信がないんだろ。
「司がもしも実家を継がなくちゃいけないなら、私もそれを受け止めようって覚悟もしていたのに、どうして不安になるの?
海と私は今はもう単なる親戚だから、心配しなくて大丈夫」
わかって欲しいのは、司との未来なら、たとえどんな未来が待っていても今この気持ちを変えようとは思わないほどに好きだって事。
本当に好きだから、そう思えるのに。
「信用できない?まだ、不安?」
私の膝の上に置かれた司の手を両手で包み込んで、口元に寄せて。
「不安にさせて、ごめんね。って、言うのって、何だか自分が本当に惚れられてる気がして嬉しいもんだね」
「……ばーか」
照れてるのか、司の言葉は震えているように聞こえる。
ふふ。
ばかでいいよ、司が大好きな単なるおばか、上等だ。

