私の真剣な言葉を聞いた瞬間、言葉を失って目を見開いた司は、
「心強い言葉はありがたいけど、俺は店とは関係ないから」
戸惑ったように呟いた。
「真珠が料亭で仕事を手伝いたいなら、姉貴に言ってやるけど、俺は設計で生きていくって決めてるから、店には絡まないぞ?」
「え?あ、ううん、お店を手伝いたいとは思ってないけど、えっと、司長男だし」
「まあ、長男だけど。長女の旦那が立派な料理人だから、俺が入る隙はないんだな。入りたいとも思わないし。
おやじも長男が無理に跡を継ぐことはないって言ってるから気にする事ないぞ」
首を傾げる司は、私が心配していたお店の事なんか全く意に介さずとばかりに苦笑している。
そうか、お姉さんが立派にお店を切り盛りしているのなら、特に司がお店の将来に気持ちを注がなくても大丈夫なのかもしれない。
私がお店のお手伝いをするべき日が来ることを覚悟しなくてもいいのかな。
「なに?真珠、店を手伝わなきゃ、とか責任感芽生えてた?」
「あ。うん、まあ、いろいろと考えてた」
「考えて、もしも店を手伝ってくれるならみんな受け入れてくれるだろうけど、無理する事はないんだ。
姉貴は小さいころから『私が女将やるから司は出ていって』って俺に言い放ってたし、あいつは女将って職業が向いてるんだよ。
だから、その事は考えずにいてくれて大丈夫」
私を安心させるように、優しく肩を抱き寄せてくれた司は、そっと私の耳元に唇を寄せて。
「でも、俺の家の事を考えて、受け止めようとしてくれて、ありがとな」
照れくさそうに囁いた。
視線を上げると、目を細めて嬉しそうに笑う顔が近くにあって。
心から幸せで、その幸せを永遠のものにするために、頑張ろうと、笑顔を返した。
見つめ合う私たちに、周りの視線はからかい気味なものだったけれど、それすら心地よくて、どうでもいいやと思えた。
「じゃ、車で来てるから行くか」
私の肩を抱きながら歩き始めた司に寄り添い駅を出ると、目の前の駐車場に司の車があった。
車に乗り込む前に、料金を清算している司を何気なく見ていると、その駐車料金にびっくりさせられた。
私を駅まで迎えにくるだけなら、長くても30分程度の金額で済むはずなのに、あまりにも大きな金額にびっくりして司の腕を思わず掴んだ。
「ねえ、司、何時間停めてたの?」
呆然と呟く私に、司は顔をしかめて。
「何時間でもいいだろ」
ぶっきらぼうな口調で一言投げ捨てた。
「で、でもこの金額ってあまりにも多すぎない?あ、機械が故障してるとか?」

