女王様のため息



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海のお父さんから手渡されたのは、夕べリクエストしていたシフォンケーキに加えて、クッキーとプリン。

お店で人気のある商品を幾つか箱に詰めてくれて、

『健闘を祈ってる』

背中をポンと押してくれた。

私が大好きなクッキーには、和三盆糖が使われていて、深みのある甘さが印象に残る、リピーターの多い商品。

店頭に並ぶとすぐに売り切れる人気商品で、私もなかなか食べる機会に恵まれないのに、今日はわざわざ朝から私の為に焼いてくれたらしい。

『料亭の方は舌が肥えてるだろうから、気に入ってもらえるか心配だけど、お守り代わりに持って行きなさい』

そんな言葉に励まされて、電車を乗り継いで来たのは郊外の一等地にある駅。

どこか重厚な雰囲気がある改札を抜けると、少し離れた柱にもたれている司を見つけた。

黒のポロシャツにジーンズの司は、普段から女の子の視線を集めているけれど、今日はどこか憂いを帯びている様子が見え隠れして、更に視線を呼び寄せている。

何人かの女の子がちらちらと司を気にしているけれど、素知らぬふりで近づいて。

苦笑いしながら司の目の前に立つと、ようやく私の存在に気づいたようにはっと顔を上げた。

「お待たせ」

顔を覗き込むと、きゅっと唇を引き締めた後、安心したように大きく息を吐いた。

「どうしたの?司も緊張してるの?」

やっぱり、結婚の挨拶だから、自分の両親といえども、緊張するのかもしれない。

ううん、きっと、お金持ちに違いない家の長男だし、背負っている責任を考えると緊張するのも当たり前か。

お姉さんが料亭を継いでいるとはいっても、それではっきり縁が切れるわけでもない。

何かしらの繋がりは一生続くし、もしかしたら、司自身お店の経営に参加しなくてはいけないのかもしれない。

司が抱えている重さを考えると、こうして緊張するのも理解できる。

「私、司の実家にはふさわしくないかもしれないけど、少しでも好きになってもらえるように頑張るから。
それに、司がご両親やお姉さんから反対されないように、今日は努力する」

私は、司の手をぎゅっと握って、ゆっくりと呟いた。