「真珠と一緒に生きられるのなら、全ての面倒な事も引き受けるっていう覚悟が俺にはなかったけど、司さんにはあったんだよ。
それが、縁というものなら、俺と真珠にはなかっただけの事。
だから、父さんも真珠を解放してやれよ」
「海……」
決して楽しそうではないながらも、海の表情はどこか吹っ切れていて、明るい。
私を解放しろと、おじさんに言いながらも、それは海自身に言い聞かせているようにも思える。
そんな言葉を聞かされて、更に私の感情は揺れて震えて、そしてどこか侘しい。
海の事も、やっぱり好きだったなと、過去形で言い切れる想いだとは言っても、ずるい私は海から離れる事が嫌だと思う。
単純に、海が大好きだし、離れる事が寂しい。
きっと、海に恋人ができたら嫉妬すると思う。
だから、やっぱり私も、海を解放しなきゃいけないんだな。
私は司との将来を選んだんだから、海と築いてきた曖昧な関係を一区切り。
海にも海の未来を明るいものにするための環境を導いてあげなきゃいけない。
それが、私が海にしてあげられる事だ。
「海にも、どんな面倒な未来を背負う事になっても手に入れたい女の子が、現れるよ。
その女の子の事を、おじさんが『自慢の娘』だって言うのは悔しいけどね」
ふふっと笑って小さく息を吐いた。
そんな私に、海もおじさんもどうにか口元に笑顔を作ってくれた。
朝の柔らかな光が店内にベールを作りこみ、コーヒーの香りがふわりと漂う。
その香りが、いつも以上に甘く感じた。

