女王様のため息



翌日、開店前の海のお父さんのお店に顔を出した時、私以上に緊張している様子の海を見て、驚いた。

というか、海、いたんだ、って不思議にも思ったけれど。

海は、私が司の家に挨拶に行くと知って、どうも落ち着かないらしい。

まるで私の身内のように、どこかそわそわして表情も固くて、逆に私の方が海を心配してしまうくらい。

「兄さんなんか、今朝電話してきて『猫100匹くらい被って行け』って大笑いしてたのに。海が緊張してどうするのよ。いざとなったら司が私を守ってくれるっていうし、大丈夫だよ。それより、この服どうかな」

へへっと軽く笑ってその場でゆっくりと一回転。

夕べ散々悩んだ末に選んだ服は、ベージュのワンピース。

あっさりとしたAラインで、膝丈。

七分丈の袖には、レースがきれいに縁どられていて、オーソドックスなデザイン故に司の実家での印象も悪くないと、えいやっという気持ちで決定。

5㎝ヒールのパンプスは茶色で、これまたあっさりとしたもの。

「ほんと、嫁ぎ先への挨拶に伺いますって感じの服装だな。
まあ、普段もそんな過激な服は着てないけど、今日はまた、清楚というかおとなしいというか」

私の姿を見て、小さく息を吐いた海は、私を心配そうに見ながら呟いた。

「俺、ついて行こうか?ってわけにはいかないよな」

「はあ?」

「いや、とにかく心配っていうか、気になるんだよ、司さんのご両親がどんな人かもわからなくて、司さんだってどこまで真珠を守ってくれるのかも謎だし、一応俺、親戚だから、ついていってもおかしくないだろ?」

「ううん、確実におかしいし。来なくていいから」